桜の下には死体が埋まってるんだよ
だから桜は薄紅色に咲くんだ
木の下に眠る者の血を吸い、肉を養分に毎年咲き乱れる
桜の花には梅のような妖艶な香りはないけれど
もし、あるとすれば
それはきっと・・・
生々しい血の香りだろうね
喰桜 (03.永遠に囚われたままで)
昔、そんなことをある人と話したことがある
今年もここの桜は一段と綺麗だね
満開に咲き乱れ
風が吹くたびに花びら達は宙を舞う
その中の1本・・・
他より少し濃い目の薄紅色の花をつけた桜
「やぁ・・・」―――桜に話しかける
それに答えるようにして
一斉に花びらはボクへと舞い落ちる
まばゆい程の花びら
一瞬にして薄紅色の世界と化す視界
そっと触れた木の温もりに涙が流れた
キミが好きだと言った桜
この桜はキミの血を吸い、肉を養分に狂い咲くのだろうか
艶やかで、どこか儚い桜
キミは桜の下でどんな夢を見て
そして今、何をボクに何を伝えようとしているの?
キミとボクだけの秘密
ボクに何かを伝えようと咲き乱れ
ボクに触れようと舞い散り
ボクを連れ去ろうと覆い囲む
キミに触れていいのはボクだけだよね
他の誰だろうと許さない
だからボクはあの日・・・
もう離しはしないよ、永遠にキミはボクだけのもの
キミをエサに咲く桜
なんて綺麗なんだろう
ボクだけの為に狂い咲けばいい・・・
ずっと一緒だよ
もしまたボクから逃げようとするならば
何度でも・・・
桜に喰われてしまえばいい
-Fin-
*あとがき*
桜を見て毒々しいと思う
私だけでしょうか?
(07.06.19)
photo by 空色地図