「・・・お前も知っていると思うが、俺はいずれ“跡部”を背負っていく人間だ。
・・・分かるだろ?――――・・・タイムアップだ。」
そう景吾は跡部財閥の御曹司、私はというと至って普通の家庭の普通の高校生
初めから釣り合うわけがないのは分かってた
そしていつかこんな日が来るのだって、私は最初から分かっていた
・・・覚悟は出来ていた
「うん。分かった。」
景吾の言葉で全てを悟った私は、精一杯感情を押し殺して笑顔で答えてみせた
それが私と景吾の最後のやり取りとなった
卒業を目前に控えた2月、雪が舞い散る日のことだった
最後の時間 (08.彼と私)
その日から学校で景吾の姿を見かけなくなり、噂で卒業後アメリカへ留学することが決まったと聞いた
将来の為なのだろう、誰よりも責任感が強い彼らしい選択だ
景吾と顔を合わせてしまえば抑えている感情が溢れ出してしまいそうな私には好都合だった
いくら覚悟はしていたとしても、やはり辛い
泣きすがり「嫌だ!」と言えたらどんなに楽だったのだろうか・・・
でも私は彼の足枷となる事は望まない
彼もまた、それを望んではいない
何もかも、最初から分かっていたことなのだから
卒業式、久しぶりに見る景吾は何処か寂し気で、それでも皆に気付かれまいと気丈に振舞う姿が痛々しかった
今日でそんな景吾を見るのも最後
でもね景吾・・・貴方には、そんな顔似合わないよ・・・
明日からは別々の人生、いつか思い出は風化して、互いを忘れる日が来るのかもしれない
それでも彼の選んだ道なのだから・・・私は黙って見守るだけ、いやもう見守ることさえ出来ない
卒業式も無事終わり、私は誰も居ない屋上へと来た
屋上からは皆に見送られて校門を出ようとする景吾の姿があった
最後に貴方をこの目に焼き付ける
絶対に泣かないって決めていたのに、溢れ出す感情を止める事は出来なかった
泣いたら駄目・・・
涙で景吾が見えなくなってしまう
本当に最後の最後だから景吾を目に焼きつけたい
景吾を忘れないように、2人が一緒に居た事が嘘じゃなかった証に・・・
その時、景吾が振り返った
景吾の方から私の姿は見えるはずない・・・それなのに・・・彼の視線は私へと向けられていた
そして彼は「・・・」と、確かに私の名を小さく口づさみ待たせてあったリムジンへと乗り込んだ
3秒、いや1秒にも満たない彼と私の最後の時間
彼とは元々釣り合うはずもない私、それでも景吾と過ごした時間は嘘でない、かけがえのない私の青春
涙を流すのは最後にしよう
強がりなんかじゃなく、笑って過ごせるように・・・
だって景吾といた時間は私の人生で1番の宝物だから
-Fin-
*あとがき*
手抜き作品でスンマセン(笑)
眠気に負けました。。
おやすみなさい(爆)
(07.06.29)
photo by 空色地図