雨って嫌いじゃないよ。
だって雨の日は決まってキミに会えるから。
雨の日
「不二〜、今日昼から雨降るんだってー。」
「英二知らなかったの?今朝の新聞でチェック済みだよ。」
「なーんだー、じゃ部活休みじゃんね!ヤッター!帰りどっか寄らない?」
「ごめん英二、今日は大切な用事があるんだ。」
「大切な用事?」
「そうだよ。」
「ふ〜ん。仕方ないから大石で我慢しよーっと。」
そう今日は昼から雨。
こんなに放課後が待ち遠しいのは、あの子に会えるから。
朝から念入りに髪をセットし、いつもは付けないはずのコロンまで付けちゃうなんて自分でも笑ってしまう。
でも、たまにしかない雨の日だから。
いつもより二倍にも三倍にも感じた授業が終わる頃、予報通り雨は降り始める。
授業が終わると手塚が教室を訪れ、部活の中止を告げた。
今さらミーティングなんて言われないか少し緊張したけど、今回は無事クリア。
手早く荷物をまとめてバス停へと急いだ。
少し早めに着いたバス停で、ポケットから手鏡を出し最終チェックをする。
雨に濡れて髪が少し乱れていたが、なんとか手櫛で整えた。
鏡をポケットに閉まった時、向こうからバスが来るのが見えた。
あれだけ朝から心待ちにしていたにも関わらず、緊張で逃げ出してしまいそうになる。
でもバスに乗り込み、彼女の姿を見つけると、やっぱり嬉しくて顔がほころぶ。
初めて会ったのは二ヶ月前の突然の雨の日で、傘を持ってなかったボクはビショ濡れでバスへと乗り込んだ。
その時ハンカチを差し出してくれたのが彼女だった。
「こんにちは。」
「あ、こんにちは。」
ボクに与えられた時間は彼女がバスを降りるまでの数分間だけ。
まだ名前も聞けていない彼女に、どうやって話しかけようか。
ボクの胸につかえた気持ちをどうしようか。
そんな事を考えているうちに、いつも彼女はバスから降りてしまう。
今日こそは・・・と思うのに、また彼女はペコりと頭を下げバスから降りてしまった。
ボクって本当に情けないよね、なんて思いながら溜息を一つ・・・。
また次の雨の日、髪を整え、コロンを付けキミに会おう。
何も言えないかもしれないけれど、ボクはそんなボクが好きだから。
-Fin-